年金受給 ~生計維持という考え方~
『遺族年金の受給者になるために』
遺族年金の受給者になるために、というのは、とても変な書き方ですが、例えば、配偶者(妻や夫などのパートナー)が亡くなってしまったとき、遺族年金が受給できるのかどうかの一つのポイント【生計維持】という考え方を知っておいて欲しいと思います。※本記事では配偶者等が請求者となるケースで説明しています。
公的年金制度には、老齢や障害、死亡を保険事故としてその事故が発生した時点における実態に着目して、その後における収入を保障することを目的とした年金があります。
事故が発生した時点ですので、遺族年金の場合は死亡時の実態が重要です。この死亡時(死亡日)における生計維持の要件が必要になるのです。
生計維持の具体的な要件とは、婚姻関係にあり、住民票上の住所が同一であること、加えて、請求者の年収が850万未満(或いは所得655万5千円未満)であること。このような条件が揃うと、遺族年金請求者は死亡者と生計維持関係があったと判断されます。※法的な婚姻関係ではない事実婚や、住民票を異にする別居の状態でも申立等を行うことで生計維持関係ありと判断される場合もあります。
この年収要件は、原則は上記の死亡日時点で死亡日の前年収入(前年所得)を確認することになりますが、収入要件を超過していた場合は近い将来(概ね5年以内)に年収が850万円未満(所得655万5千円未満)になることが推認できる場合には、死亡日においても生計維持関係があるものと取扱うことができます。
近い将来に年収が下がることが推認できる場合とは、定年退職を控えていたり、医者や弁護士の有資格者の死亡者が経営していた事業所からの給与があったが、その死亡により事業所の経営が成り立たなくなり、収入が無くなることが推認される方場合などです。
顧問先の経営者様から報酬の設定について相談を受けることも多くあります。
社労士としては在職老齢年金の観点から年金と報酬の調整についてご説明することはもちろんのこと、上記の遺族年金を受給するための生計維持の考え方についてもご説明する必要性を感じています。ご夫婦二人で経営されている事業所様の場合、パートナーを失ったあとの事業経営の厳しさは想像できます。一時的にも収入が落ち込むこともあるでしょう。遺族年金を実はあてにしている場合もあります。そんな時、上記の生計維持関係の条件をご存じの上で報酬設定していた場合と、知らなかった場合、納得感が全く違います。
年収849万9,999円と850万円の違いはたった1円ですが、その後の生活設計にはとても大きなものであると思うのです。
※障害年金の加算対象となる生計維持の認定は事故(障害認定日等)後に新たに生計維持関係になった場合も(事故時に概ね5年以内に下がることは推認できなかったが結果的に収入が下がった場合など)も、それ以降加算対象となります。
その他、年金の請求でお困りの方、お気軽にご相談下さい。