短時間勤務正社員制度について
Q
正社員4名、パート4名のクリニックです。子育て中の職員(正社員)から賃金は減っても良いので勤務時間を短くしてもらえないかと言われました。理由は小学生の子どもがいるため帰宅後の時間を一緒に過ごしてあげたいとのことです。クリニックとしても子どもに手がかかるのは一時のことですし、業務に慣れた職員を手放したくはないので何とか対応したいのですがこのような申し出にはどう対処したら良いでしょうか?
A
申し出のあった職員のお子様は小学生とのことですから、法定通りの短時間勤務制度では想定していない期間です。
※法定は子が満3歳に達するまでの期間
上記のクリニックでは従業員が10人未満のため就業規則の作成・届出義務はなく、実際このクリニックでは就業規則(各正職員・パートタイマー用)と賃金規程を作成して運用している程度で育児・介護休業規程の整備もありません。ただし、このような状態でも要件が整っている職員の希望があれば法定の短時間勤務制度は当然に利用できます。
規定を整備し、短時間勤務の延長を盛り込む(例えば子が中学就学前等)することも可能ですが、『短時間勤務正社員』制度を導入するという方法もあります。
制度を導入するには現在の就業規則に加えて、短時間勤務正社員の規定も整備する必要があるでしょう。以下参考までに規程例を示します。
◆この制度の利用事由について示します。本ケースでは以下のようになるのではないでしょうか。なお、契約期間は無期です。
第○条(短時間勤務正社員制度利用事由)
以下の事由により短時間勤務正社員制度の利用を希望し、かつ、クリニックが認めた場合には、短時間正社員として勤務させることができる。
1.中学就学前の子の育児を行う場合
2.疾病または負傷によりフルタイム勤務が困難な場合(その他の例)
第○条(雇用契約期間)
雇用契約期間の定めはない
◆利用事由が解消された場合の規定も必要です。
第○条(正社員への復帰)
短時間正社員が制度の利用期間を終了した場合には、正社員(原職または原職相当職)に復帰させる。
◆勤務時間は個別に柔軟に設定できるように規定します。
第○条(勤務時間)
1週間の所定労働時間は○時間とし、1日の勤務時間は転換時(又は採用時)に個別に決定する。
◆賃金や賞与は減額になりますので納得性のある算定根拠を示します。
第○条(賃金)
正社員の所定労働時間に対する、短時間正社員の所定労働時間の割合に応じて、基本給及び○○手当を支給する。・・・
第○条(賞与)
賞与は、正社員の所定労働時間に対する、短時間正社員の所定労働時間の割合に応じて支給する。・・・
◆退職金算定の根拠には影響するのかしないのか
第○条(退職金)
退職金算定の際の勤続年数の計算にあたっては、正社員として勤務した期間に、短時間正社員として勤務した期間を通算する。・・・
上記の他にも時間外労働は発生するのか否か?社会保険の適用は?等々、規程しておくことはありますが、定めのないものは正社員就業規則に準じるという形になるでしょう。
ここは丁寧に精査してください。また、今ケースでは制度利用事由がある程度限定的ですが、介護や自己啓発、ボランティア活動など実態と今後の状況に応じて規定していくと良いでしょう。
短時間勤務正社員制度は、意欲・能力の高い人材の確保や生産性の向上、職員の満足度の向上による職場定着などメリットが多いです。職員のニーズの把握や業務コントロール、規程の整備など設計は多少面倒ですが、パートタイマーから短時間正社員への転換なども視野に入れ、活用できる制度だと思います。
ちなみに、キャリアアップ助成金の有期契約労働者等の正規雇用労働者・多様な正社員等への転換等を助成する「正社員化コース」では、正規雇用労働者に「多様な正社員(勤務地・職務限定・短時間正社員)」が含まれますのでこちらの利用も検討されると良いと思います。