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労災【パワハラ・過重労働】

Q
当院で精神疾患を発症し休職中の看護師がおります。本人が医師によるパワハラが原因と主張していたため、院内で調査を行いましたが結局事実確認できませんでした。当人は労災申請をしたいと言っていますが、労災申請は認められるのでしょうか?また、当院としては事実確認できないものの、今後同じようなことが発生しないように再発防止策として、パワハラ防止のための社内プロジェクトを立ち上げました。

A
パワハラの申立てがあり、事実確認ができなかったとはいえ、実際にパワハラの被害を訴え、精神疾患を発症し休職中の職員がいらっしゃることを鑑み、再発防止策を講じている点はとても良いことです。事実関係が確認できなかったことを理由に、被害を訴えている方に何ら措置をせず放置している事業所が多い中、とても良い対応です。
労災の申請に際しては、事業所としてはしっかり調査を行った結果を踏まえ、会社として証明できる事項は証明し、事実確認できない点はその旨理由を付して書類作成するのが良いでしょう。労災に該当するか否かは労基署が判断することですので、いずれ、労基署からの調査はありますが、調査への協力は真摯に対応して下さい。また、そこでの気づきは再発防止策へ繋げて頂きたいと思います。

最新のデータとして、令和2年度の精神疾患(精神障害)による労災申請件数は2,051件、決定件数は1,906件(当該年度以前の申請分も含む)、支給決定件数は608件となっており、認定率は31.9%です。申請が多い業種としては、「医療・福祉(社会保険、社会福祉、介護)」、「医療・福祉(医業)」、「運輸業・郵便業(道路貨物運送業)」が上位3業種で、支給決定件数の上位業種も同様です。精神障害を発症した原因となる具体的な出来事としては、「パワーハラスメント」が99件、「同僚等から暴行やひどいいじめ、嫌がらせを受けた」が71件、「上司とのトラブル」が14件、「セクシャルハラスメント」も44件と、パワハラやセクハラ、対人関係のトラブルが高い数値になっています。なお、精神障害の発症には過重労働も重要な要素ですが、1か月あたり100時間以上120時間未満の時間外労働が56件と確認され、パワハラやセクハラ、対人関係のトラブル等の具体的な出来事と時間外労働の多さが複合的に発生している可能性も想像できます。ハラスメント被害の訴えがあったとき、事実確認の調査をする際には加害者とされる方の言動の調査も当然必要ですが、時間外労働などが発生していないか、労働時間管理などの労務管理が適切に行われていたかどうかも併せて調査していく必要があります。「ハラスメントは発生させない!」という確固たる意志のもと、予防措置はもちろん大切ですが、万が一発生してしまった場合の事業所の初動対応がとても重要です。令和4年4月から労働施策総合推進法改正に伴う、『職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置』が中小企業にも義務化されます。労働局での調査でもハラスメント(いじめや嫌がらせ)に関する相談件数は8年間連続でトップとなっており、事業所としては喫緊の課題です。改正法や指針の内容をしっかり理解して措置を講じ、ハラスメントの無い職場環境を目指していきましょう。

 

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