ストレスチェックの活用
Q
ストレスチェック制度の実施が義務付けされている事業場ですが、上手く機能しているか自信がありません。ストレスチェック制度の他の事業場の実施状況や課題、利用できる助成金などがあれば教えて下さい。
※ストレスチェック制度とは、職場におけるメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的に、常時50人以上の労働者を使用する事業場に対し、平成27年12月から年1回のストレスチェックとその結果に基づく面接指導などの実施を義務付けているもの。
A
厚生労働省のホームページで、全国の事業場の労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の実施状況についてはじめて取りまとめ、公表しています。
この結果を見ますと平成29年6月末時点で8割を超える事業場がストレスチェック制度を実施済みであることが分かります。
なお、医師の面接指導の実施状況は全事業所規模平均が32.7%で、さらにストレスチェックを受けた労働者のうち上記の面接指導を受けた労働者は0.6%程度となっています。
また、ストレスチェック制度を実施した事業場のうち、集団分析※を実施した事業場は約8割のようです。
※集団分析とは、ストレスチェックの結果を職場や部署単位で集計・分析し、職場ごとのストレスの状況を把握すること。集団分析の結果を、業務内容や労働時間など他の情報と併せて評価し、職場環境改善に取り組むことが事業者の努力義務となっている。
今回、この集団分析を踏まえて専門家の指導に基づき、職場環境改善計画を作成・実施した場合に、指導費用及び機器・設備購入費の実費を支給する『職場環境改善計画助成金』が新たに作られました。(上記は同助成金のAコースの内容)
他にも、従来のストレスチェック助成金に加え、『心の健康づくり計画助成金』、『小規模事業場産業医活動助成』など、産業保健関係の助成金が拡充されています。
制度の今後の課題ですが、2014年に成立した改正労働安全衛生法では、50人未満の事業場での実施が努力義務とされ、労働者のストレスチェック受診も義務化されていません。身体の健康に関する定期健康診断は、事業場規模にかかわらず事業者には実施義務があり、労働者には受診義務があるのに「心の健康診断」に該当するストレスチェックにおいて、取り扱いに差を設ける合理的な理由は見当たりません。したがって、「すべての労働者を対象に実施する」という対象者の拡充は最低限必要な課題であると言えるでしょう。
また、実際に高ストレス者に面談を受けてもらうためには、情報管理が徹底されていることや、医師の面接指導以外の補足的な面談を設置して本人が希望する時期を逃さないこと、面談(面接指導や補足的面談)の申し込み先を、実施事務従事者ではなくて、面談を担当する者(たいていは会社ではなく、医師、保健師、看護師若しくは精神保健福祉士又は産業カウンセラー若しくは臨床心理士等の心理職)とするなど、事業場によって様々な方法があると思います。面接指導に臨むハードルを下げるために何がネックなのか、従業員に無記名のアンケートを取るのも良いと思います。いずれにしましても、紆余曲折を経てできたせっかくの制度、職場環境の課題を乗り越えるためにも上手に利用し育てていきたいと考えます。