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兼業(副業)勤務時の労働時間管理


この度、当クリニックでは新たに医療事務の職員を雇用することになりました。夕方は自宅近くの当院で働きたいとの希望で応募されましたが、この職員は当院のほかにも掛け持ちで勤務しているクリニックがあり、当院が兼業先となるわけです。この事情は双方のクリニックが承知して採用するわけですが、このような働き方をする職員の場合、労働時間管理の面で注意する点を教えてください。


昨今、政府も兼業・副業を推進していることもあり、また労働者も収入確保や自身のスキルアップ、ライフスタイルにあった働き方をするため、複数の勤務先を掛け持ちして働くことも多いです。その際、労働時間管理についての認識を労使ともに共有することがとても重要です。実際は、兼業・副業を認めて就業規則等にも明記する事業所もありますが、兼業先では雇用関係になることを認めず、フリーランスや自営業、企業役員などの働き方を想定しているケースも多いです。(この場合は兼業先では原則労働時間管理(及び割増賃金の支払)の必要はありません、但し健康管理の面で労働時間把握は重要です)今回のケースでは上記と異なり、本業、兼業先でも雇用契約を結び、双方それを承知しているということですので労働時間管理と割増賃金の支払について整理したいと思います。
現行の関係法令では、労働基準法(昭和22年法律第49号)第三十八条「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」昭和23年5月14日 基発第769号(局長通達)「「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含む。」とあり、以下のような認識で時間管理を行ないます。
例えば下記のような働き方をした場合、

クリニックA(午前中4時間) 自宅 クリニックB(午後4時間) Bで1時間超過

複数の事業場で労働する場合、労働基準法の労働時間に関する規制(原則1日8時間、週40時間)は通算して適用されるとしており、事業主Aのもとで働いていた労働者が、後から事業主Bと労働契約を締結した場合の割増賃金の支払い義務者は事業主Bに法定の割増賃金の支払い義務があるとされます。(後から契約を締結する事業主 は、その労働者が他の事業場で労働していることを確認したうえで、契約を締結すべきとの考え方 を前提にしています。)また、通算した所定労働時間が既に法定労働時間に達していることを知りながら労働時間を延長するときは、先に契約を結んでいた使用者も含め、延長させた各使用者が同法上の義務を負うこととなります。以下のようなケース、この場合は事業主Aが割増賃金の支払義務があります。

クリニックA(午前中4時間) Aで1時間超過 自宅 クリニックB(午後4時間)

この他にも様々なケースがありますので、厚生労働省労働基準局提出資料の「副業・兼業における現行の労働時間管理、健康管理について」を参考にしてください。なお、割増賃金の支払の問題はなくとも健康管理面での労働時間把握は大変重要ですので、本人申告が基本になるとは思いますが、A、B両クリニックで労働時間の適正な把握に努めていきましょう。

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